悩む。いろいろ悩む。たまに病む。

金沢大学修士2年物質化学専攻。#有機化学 #国際協力 #ソーシャルビジネス #双極性障害 #休学 #パラレルキャリア

論文要約No.3.化学界のシンデレラ?〜かぼちゃの中で2つの分子が結ばれる〜

Supramolecular catalyst functions in catalytic amount:
cucurbit[8]uril accelerates the photodimerization of Brooker’s merocyanine†

著者:Yuetong Kang, Xiaoyan Tang, Hongde Yu, Zhengguo Cai, Zehuan Huang, Dong Wang, Jiang-Fei Xu* and Xi Zhang *

雑誌:Chem. Sci, 2017, 8, 8357-8361
DOI:10.1039/C7SC04125J(オープンアクセス)

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✢Abstract

超分子触媒を用いることにより反応の収率と選択性を上げることを目指した。
超分子触媒は生成物阻害効果によって通常は当量加えられる。しかし、本報告では超分子触媒系を1%の触媒量で達成した。cucurbit[8]urilはBrooker’s merocyanieの光二量化を著しく促進した。ホスト-ゲスト錯体の競合によってホスト内で生成した光二量化生成物は速やかに未反応のモノマーに置き換わるため、触媒プロセスは周期的である。触媒量のcucurbit[8]urilによって光二量化は10分以内に完結した。

 

つまり、
かぼちゃ分子(馬車)の中で2人のメロシアニンさん同士がカップル成立。
『はい、次のカップル待ってるから出てってねー』
そして馬車から追い出される
次の2人のメロシアニンさんたちが馬車の中へ。そしてカップル成立。

『はい、出てってねー』
無限ループ!!!
かぼちゃの馬車どんだけ優秀な仲人だよ!
という論文であります!!(笑)

 

✢Introduction

超分子触媒とククルビット[n]ウリル>

超分子触媒は化学反応を制御して、選択性と収率を上げることを目的としている。
超分子ケージとしてはシクロデキストリンなど多くの化合物が試されている。

cucurbit[n]urils(CB[n]s)超分子触媒として用いられるホスト分子のひとつ
⟹グリコウリル部分をユニットにもつ大員環化合物。

 さまざまなゲスト分子を封入することができ、バルク溶液と異なる反応場を作り出すことができる。
・CB[n]sの2つ効果
 1.外部の基質からゲスト分子全体またはその一部を守る。
 2.ゲスト分子の特定の反応を促進するナノリアクターとなる。 

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*ククルビット[n]ウリルについての詳しい説明はケムステに記事が載ってました。
https://www.chem-station.com/molecule/2017/11/cucurbituril.html

 

超分子触媒の欠点>
・多くの超分子触媒は生成物阻害(product inhibition)という欠点がある。
 生成物阻害とは?
 ①生成物が超分子触媒と強い親和性を持つ
 ②生成物がホスト分子の活性部分を占める
 ③反応基質と超分子触媒の効果的結合が妨げられる
 ④超分子触媒は失活してしまう。
このため、通常は高収率で反応を進ませるためには超分子触媒を当量または過剰量加える必要がある。

 

<This work>
・触媒量の超分子触媒の系を達成。
・反応基質であるBrooker’s merocyanine(BM)を2:1(BM:CB[8])の割合でCB[8]の中に取り込ませることで、光二量化反応を著しく促進させることに成功。
・錯体競合によって二量化生成物は別の未反応の反応基質のペアに置き換わり、活性部位は復元され周期的な触媒プロセスを実現した。
・触媒量のCB[8]でもBMの二量化反応を効果的に促進させるのに十分であることを実証した。

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✢Results and Discussion

<UV-Visスペクトルによる光二量化反応のモニター>
○BMに1%当量のCB[8]を加え、光反応をモニター(Fig. 1a)

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・trans-BMのπ-π*遷移に起因する吸収ピークが371nm付近に存在。(Abs@371)
・Abs@371は光照射後15sの間にtrans-BMからcis-BMへの光異性化のため、急激に減退。
・一方で、この15sの間にcis-BMに起因する250nmの吸収ピークが増加。
・さらに光を照射し続けると、226nmに新しいピークが出現。
⟹光二量化反応によってBMの二量化体(BM2)が生成していることを示唆。
○ABS@371を用いてCB[8]を触媒として加えた系のBMの光二量化反応の速度のモニター(Fig. 1b)
・50%のCB[8]を加えた時(BM: CB[8]=2:1)、反応は90sで完結。
・1%のCB[8]を加えた時(BM: CB[8]=2:0.02)でも、時間はよりかかるが反応は10min以内に完結。
⟹触媒量のCB[8]でBMの光二量化反応を促進できることを示唆。

 

<錯形成の証明 by NMR&ITC(isothermal titration calorimetry)>

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○NMRスペクトルより錯形成の証明(Fig. 2a)
・BMの芳香族領域の4つのプロトン
 アルケン領域の2つのプロトンはCB[8]の添加で高磁場シフト。
⟹BMはCB[8]の中に封入されている。

 ○ITCを用いて錯形成を証明。(Fig. 2b)
・BMはCB[8]と2:1の割合で錯体を形成している。
・全体の結合定数Ka=8.50×1011M-2
・一段階目の結合定数Ka1=2.95×105M-1
・二段階目の結合定数Ka2=2.88×106M-1
・配位指数(cooperativity index)は39.0 ⟹ポジティブな配位能を示す
・一段階目のBMのCB[8]のキャビティーへの挿入は二段階めのBMの挿入を優位にする。
⟹ CB[8]のキャビティー内で光二量化は進行可能。

 

<光反応のモニター by NMR>

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○BMの光反応(CB[8]非添加)を、NMRを用いてモニターした。(Fig. 3)
・BMはUV照射前、トランス体として存在。
・BMは最初、trans体からcis体へと変換される。
・さらにUVを照射すると、trans-BM:cis-BM=1:2の比となり、徐々に光二量化が起こる。
・3hの光照射で62%のBMがダイマーとなった。
○BMの光反応(CB[8]1%添加)を、NMRを用いてモニターした。(Fig. 4)
・二量化は10min以内で完了
・CB[8]の非化学量論量によって、BMが迅速に変換したことが13CNMRによって確認された。
⟹trans-BMがCB[8]のキャビティー内で光二量化し、同時にバルク溶液中ではcis-BMからtrans-BMへの光異性化が起きていることが示唆される。
・cis-BM、trans-BMはUV照射中で消費され、最終的にダイマーとなる。

 

<生成物ダイマーのCB[8]からの脱離の証明 by ITC>

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・触媒サイクルを回す上で不可欠なCB[8]からのダイマー(BM2)の効果的な脱離をITCによって調査。
・BM2とCB[8]は1:1錯体を形成し、結合定数Ka=2.20×106M-1であった。(Fig. 5a)
・BMとBM2のCB[8]に対する競争的な錯形成を考慮すると、平衡定数Keq=3.86×105M-1と見積もられた  ⟹BM2はBMによって自発的に置き換えられ、未反応のBMの方がBM2よりCB[8]に対して強く結合する。
・CB[8]のキャビティーの回復は以下の2つを示す。
1.ホスト-ゲスト錯体としての機能
2.未反応のBMの競争効果によってダイマーを与える。
・CB[8]の触媒活性の維持は二量体生成物の効果的な脱離によって達成されている。

 

<流動的な反応フローへの応用>
Q: CB[8]を用いて反応基質を継続的に変換し続けることはできないの?
A:光反応用の試料溶液を補充して、光を照射すればいいんじゃね!
・補充-照射プロセスを繰り返すことができることを証明。その数18回!(Fig. 5b)
・補充-照射プロセス中、CB[8]の触媒活性の減退はみられなかった。
・このプロセスでのCB[8]は超分子触媒として働く。光反応プロセス中触媒活性は保持される。

 

✢Conclusion
・CB[8]はBrooker’s merocyanineの光二量化を著しく促進した。
・BMに対する触媒活性は以下に起因。
 キャビティー内での反応性の向上
 反応基質の生成物と比べた時の高い結合親和性
・この系ではジカチオニック生成物BM2の2つの正電荷間の距離はCB[8]に対する距離より大きく、
それによりCB[8]は未反応の新しいBMと結合し、触媒サイクルを継続的に回すことが可能となった。